債務超過となった企業のM&A
債務超過となった企業のM&Aはできますか?とよく聞かれます。答えはYESです。

そもそも債務超過とは具体的にどういった会社を言うのでしょうか。
会計的には、資産-負債がマイナスとなる会社、すなわち純資産がマイナスとなる会社のことであり、具体的には会社の資産をすべて売却したとしても、負債が全額返済できない状況と言えます。すなわち、負債が返済できない会社であるため、実質的には倒産している状況、とも言えます。もちろん、負債には期限の利益というものがあり、すべての負債を今すぐに返さなくてもよい状況なので、法的な破産とはすぐなりません。
通常では、債務超過の会社に、増資する投資家はいません。
債務超過が解消されるまでは、増資して資本金を入れても、それは純資産のマイナスが解消されるだけで、増資した瞬間に債務超過の分だけ株式の価値が毀損されてしまうからです。
1億円の債務超過の会社に、1億円の増資をしたら、その瞬間に1億円は消えてしまうのです。
債務超過の会社と合併する会社もありません。その会社の債権者も株主も、絶対に反対するからです。また上場会社はそもそも債務超過の会社に対してのM&Aができないのです。
しかしながら、債務超過であってもM&Aはできるのです。当社での経験によると、むしろM&Aが成約するケースは資産超過よりも債務超過の会社の方が多いかもしれません。
それはなぜでしょうか。
それは、債務超過であっても会社として価値を有するケースもある一方で、債務超過の会社は基本的に株式の全部を1円という非常に安い価格で買うことができるからです。また、債務超過の会社をM&Aする手法も存在するから、です。
また、日本の中小企業はどうしても厳しい経営環境にさらされており、資金を銀行借入に頼っているがために、相対的に債務超過の会社が非常に多く存在するから、ともいえるからかもしれません。
それでは、具体的にどういったことかお話ししていきます。
債務超過の会社の価値

債務超過と言っても、会社の価値がマイナスであるとは限りません。債務超過になるのは、先ほど述べたように負債より資産が少なくなった状態、です。しかしながら、資産が少なくなった状態というのは、必ずしも価値がなくなったとは違うのです。例えば、非常に有望な技術を開発した会社があったとします。こうした会社は、その技術を獲得するために、人的な投資、物的な投資を過去においてしているわけですが、こうした投資の成果、すなわち技術というのは現在の企業会計では資産とは認められません。すべて研究開発費として費用になって、資産の減少をもたらすのです。費用ですから、家賃や消耗品と一緒で、たとえノウハウが蓄積されたとしてもすべてなくなったものとして考えられてしまうのです。また、飲食店であれば、店舗を出店してチェーン化したとしても、売上が少なければ減価償却として店舗は徐々に費用化され、損失としてこれまた純資産を毀損していくことになります。
こうした技術や店舗は、企業会計では本来の価値としては貸借対照表には計上されません。しかしながら、他の会社にとってみれば、こうした貸借対照表に計上されていない資産であっても宝に見えるのです。
すなわち、無形の資産であっても他人にとっては資産価値があり、それを事業に活かし、将来の収益へとつなげることができ、そうした資産を比較的安価に、しかも時間をかけずに取得することが可能となるのです。当社では、こうした債務超過の会社であっても数ある買い手の中から価値を見出してくれる先を探すことが可能です。
また、債務超過になっている企業は、当然に税務上の欠損金を抱えていることが多い、というか必ず抱えています。この欠損金は将来において利益が上がった際には、法人税を減らしてくれるという経済的価値も高いのです。ただし、一定の要件を満たしていないと、こうした繰越損失は使用制限がかかるので、必ず専門家に相談する必要があります。
債務超過会社のM&Aの手法
債務超過会社をM&Aするための手法には主に以下の方法があります。
- 会社分割して、債務超過ではない会社を作ってしまう
- ファンドを作って、キャッシュフローを生む事業を譲渡する
- 特許、ノウハウ、著作権などの無形固定資産を信託して、保全する
- 債権をサービサーに譲渡してもらい、さらに、それを買い取る
- 借入金を資本金に組み替える(デットエクイティスワップ:DESという方法)
- 取引先に増資してもらい、そのお金で合弁会社を作る
などなど、多様な手法があります。
しかしながら、債務超過の会社のM&Aは、純資産が潤沢な会社に比べてM&Aが簡単というわけでは決してありません。むしろ、買い手にとっては一歩間違えば多額の借金を負うことにもなりますし、また債権者とのやり取りにも慎重さが求められます。したがって、きちんとした手続きで実行しないと、買い手に不測の損害を与えることにもなりますし、また売り手としても相手に損害を与えたことで損害賠償の対象にもなりかねるのです。また債権者、特に銀行に対する負債については慎重に扱っていかないと、詐害行為や債権者保護手続きの不足などで、銀行から訴えられるリスクもあります。
当社は、債務超過の会社のM&Aについても、豊富な経験を有しています。会社が債務超過に陥ってしまい、M&Aはおろか破産するしかないと悩んでいる方は、ぜひ一度当社にお問い合わせください。
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